理想のバーベキュー
「今年の夏、バーベキューに行ける?」
スマホの上画面を引っ張ると毎年見るLINEが届いていた。
ありがたいことに家と会社しか往復しないイジョドクでもこんなLINEをいただけるのだ。
だが、今年の夏はバーベキューには行かなかった。
私にとって目の前のタスクで死にそうな時に先の予定を立てるのは嫌いな人間に媚びを売るのと同等に不可能な事だった。
行きたくない訳ではなく、むしろ行きたいのだが、完全にブリンク状態で正常な思考判断が出来なかったのだ。
つまりは言い訳であるので許して欲しい。
ただ、私は思った。
せめて妄想の中だけでも自由にバーベキューしようじゃないか。
魔法使いへの逆執行猶予付き2年の異常独身男性の世にも奇妙な物語を垂れ流すことを決起した。
人数は男2女2。
この人数、性別配分がベストフォーメーションと言える。
何もしないやつがいなければ、野郎だけでもない。
人数が多すぎる訳でも、少なすぎる訳でもない。
ごちゃごちゃしてる時、比較的黙りがちな精神異常者に配慮できている。
14-15シーズンに3冠を制覇したバルサにおける究極のフォーメーション、4-3-3を彷彿とさせる並びだ。
闘将グアルディオラ監督もこのフォーメーションに関しては次のように述べている。
「当たり前だが気づかなかった。
しかし、良く考えるとこのフォーメーション以外の選択肢は無い、
ということだけは分かる。」
場所は即答で川だ。
ただし近くに温泉がある所でないといけない。
海は基本アウトサイダーの地なので、
インサイダー側の人間は素直に川とか山らへんにしておくのがベストだ。
外で長時間なんかするのは汗で服とかベタベタになり色々とキモい。私はこれに耐えられなくなるので温泉は近くに配置しておきたい。
虫ももれなくキモいので防虫対策は必須。
次に何を食うかだが、
鳥の丸焼きとパエリアかアクアパッツァ的なのが望ましい。
オシャレ感も出るし仕込んでおいたものを焼いたりするだけで良いのが楽。
「それもうグランピングで良くね?」
イジョドク特有の架空友人(イマジナリーフレンド)が脳内に語りかけてくる。
いや、違うねん。
そもそもバーベキューというのは普段やらない事を
普段使わない謎の器具でやる、
というよく分からん過程が良いのであって、
当日にうころとりやら内蔵の処理をするのはスマート感もでないし、ナンセンスなの!
野菜は美味しいから食べるの!!
ほぼ出来合いのやつをダッチオーブンとかでやるとそれっぽいので良い。もちろん現場でレンタルで良い。
飯食ってそれっぽい話をしながら日が暮れたら温泉に行って眠気に襲われながら帰宅。
ヤバい。最高じゃないか?
でもこれ、実現不可能なんです。何故なら・・・。
いや、これ以上はやめよう・・・。
奇妙な世界へ通じる扉は貴方のすぐ傍に空いています。
次の扉を開けるのは貴方かもしれません。
では。